■ばぐ 漫才

●エンドオブサマー 第8話「残された二人」 00/11/24●

3時半。皆出払って、残されたのは管理人と、彼女。



パティットは、一人悩んでいる。
一人で。ずっと。
お気に入りの巨大なヌイグルミを抱えて、ベッドに身を預けている。心臓の鼓動が激しくなる度、ぎゅっとヌイグルミを抱きしめる。
とても優しく、力強く守ってくれたあの日から、あの人のことが頭から離れない。
「ジーカーさん・・・」
かすかな声で、男の名を呟く。
思い出されるのは、夏の日のあの言葉。 さりげない、何てことない言葉だったかもしれないが、彼女にとっては、どれだけ力強く、頼れるものと感じたのだろう。
彼を思う度、何度も身をよじり、寝返りを繰り返す。
だが、彼女の心は、ジーカーで一杯になることは無かった。
同時に、もう一人の彼女にとって大切な人が浮かんできてしまう。
「管理人・・・さん・・・」
彼女自身、管理人とエルザが仲良くしているのは良く知っている。だが、「取られた」などという気持ちは全く無い。 そんなことは関係なく、管理人が好きなのだ。初めて出逢ったあの日から。 何故だかはわからないが、一緒に居ると安心する、心が安らぐ・・・
彼女は、再び寝返りを打ち、大きくため息を一つつく。

今日の昼、ジーカーに言われた言葉が何度も頭を過ぎる。
(確かに、ジーカーさんは大好き。管理人さんも大好き。エルザも、キャルーも、ルーニィも・・・嫌いな人なんていない。みんな好き。 好きの種類って・・・ジーカーさんも、管理人さんも、男性として好きなはず。エルザは友達みたいな感じ、キャルー、ルーニィ・・・妹みたい。 でも、ジーカーさん・・・管理人さん・・・違うの? 違うのかなぁ・・・・・・でも、どう違うの・・・・・・)
同じことを何度思ったことか、もちろん答えには繋がらない。むしろ深みへはまってゆく。
ジーカーを、管理人を思うたび、強く心が締め付けられる。
「わかんない・・・わかんないよ・・・・・・」

一滴の雫が頬を伝う。
それを合図とするかのように、彼女は体を起こした。
無理にでも気持ちを切り替えようと頭を何度か振り、部屋を後にした。









「なんだ、2人とも出てったのか」
管理人は居間のテーブルに残された置き手紙を見て呟く。
「リュアもあいつらに付いてったっつーしなぁ」
ノイエスから電話連絡がありました。
「えーっと・・・エルザが出かけてるだろ・・・・・・」
「んで、あいつらとリュアがキメラで・・・」
「キャルーとルーニィが買い物か・・・」
座布団に座り、行き先を整理。
「・・・厄介なのが残ってんな・・・・・・」
頬杖を突き、淹れてきた茶をすすりながら考える。

(恋の病だろ・・・? ジーカーに何を悩むんだ?
しっかし、あんな性格で今まで男がいなかったのは不思議だーな・・・
彼氏を作ろうなんざ考えてなかったのか・・・」
でもジーカーとはくっついたしな・・・
ジーカーみたいなんががタイプだったんか・・・
じゃあ何に悩んでんだ?
やっぱ他に好きな奴がいるんか・・・?)



「俺が悩んでどーすんだよ」
「・・・・・・とりあえず・・・」
パティットに会う事にした。彼女の部屋へ向かう。



「・・・・・・」
プレートは「お出かけ中」の面。
「・・・出かけてるんか?」
ノックしても勿論反応は無い。

・・・カタカタカタ
「地震か・・・最近多い・・・・・・」
ガタガタガタガタ・・・
結構大きな揺れが襲う。
「きゃ―――ッ!!」
「パティット!?」





つづく。

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