■ばぐ 漫才

●エンドオブサマー 第3話「ドア越し」 00/10/22●

二階への階段を登ってすぐ、廊下の左側にパティットの部屋がある。
ドアには、「パティットのへや」と自筆で書かれたプレートがあり、表裏にはそれぞれ「入ってまーす」「おでかけ中〜」とある。
部屋はフローリングで、机、本棚、タンス、衣装箱・・・これらの上に大量の人形やヌイグルミが並んでいる。
ベッドの上には一際大きな兎のヌイグルミが置いてあり、彼女はこれを抱いてラジオを聞きつつ眠りにつく。照明をつけたまま。

・・・ガチャリと、部屋の鍵をかける音。



送れて、ジーカーがやってくる。
ドアを二度ノック。
ジーカー「パティットさん? ・・・・・・入りますよ?」
ノブを回すが、勿論開かず。
・・・空間移動で部屋の中に入ることはたやすいが、そんな事をする彼ではない。
ジ「・・・何でもなければ、なぜこのような行動をとるのですか」
ドア越しに話し掛ける。
パティット「・・・・・・何でもないの・・・・・・何でも・・・ないんだから・・・・・・」
数秒たって、パティットが返す。
その言葉には、明らかに元気がない。
ジ「何でもないはずはないでしょう。せめて私にだけでも話してもらえないでしょうか・・・?」

・・・・・・長い沈黙のあと、パティットが口を開いた。
パ「・・・・・・好きな人が・・・2人・・・居るんです・・・・・・どっちが本当に好きなのか・・・わかんない・・・」
ジーカーは、やれやれといった表情を浮かべる。
パ「・・・・・・どっちを選べばいいのか・・・考えたら・・・・・・どっちも・・・・・・2人とも・・・」
ジ「貴方には好きな人が二人しか居ないのですか?」
ジーカーは話を遮るように言った。
パ「え・・・・・・?」
ジ「私は、エルザさん、キャルーさん、ルーニィさん、リュアさん。ソイヤー達もそうですし、チーフ・・・管理人さん。 そして、パティットさん、貴方もです。みんな好きですよ」
パ「う〜〜、だから・・・そういうのじゃなくて・・・・・・」
ジ「ただ『好き』というなら、違ってはいないでしょう。その『好き』の中にもさまざまな種類があると思いますが?」
パ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ジ「・・・まあ、無理にどちらかに絞れということではありませんが・・・・・・パティットさん、悩んで悩んで、 悩みぬくのもいいでしょう。答えが出てしまっては、もう二度と悩めないのですから・・・・・・悩んだ分だけ大きくなれますよ・・・・・・」
パ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ジ「・・・さてと・・・・・・では、私はこれで失礼しますよ・・・?」
パ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ・・・ありがとう・・・ございました・・・・・・」
パティットのその言葉を聞くと、ジーカーはゆっくりと部屋を後にした。

思わず彼女を追ってしまったが・・・とりあえず言うことは言った・・・あとは彼女次第・・・・・・
彼女の心が多少は癒えることを願って、彼は食卓へ戻る・・・・・・





あー、かゆいかゆい! つづく。

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