第20話 初日

東出団長は例年海辺で初日の出を拝むのを楽しみにしておりました。
しかし今年は三つ子の妨害を懸念して近場ではなく、ちょっと遠い所まで足を延ばしてみました。

(団長)「・・・一人っていいなぁ!!」

キャラに似合わず浮かれちゃってます。

(団長)「いっそこのまま逃げちまうか・・・?」
などと想いを巡らせたのもつかの間、後部座席でなにやら物音が。

(団長)「・・・・・・まさか」

(エクレア:エ)「・・・お姉様ぁ・・・変なところ触らないでぇ」
(プリン:プ)「だって暗くてよく見えないんだもん」
(カステラ:カ)「大体、こんな狭いところに三人も入ろうなんて事が間違ってますわ」

(団長)「・・・・・・」

とりあえず聞かなかったことにして運転を続ける団長。

ぶろろろろ・・・
赤信号。
ききっ。

ばさ
(プ)「やっと止まったぁ」
ごそごそ・・・
(エ)「もぅ・・・ぐしょぐしょですぅ・・・」
もぞもぞ・・・
(カ)「だからアナタはトランクに入ってなさいって言ったのに」

(団長)「・・・単車にすれば良かった・・・」
(プ)「よいしょ・・・そんなこと言わずにさ、新世紀の幕開けなんだから」
(エ)「みんなで出かけた方が楽しいですよ?」
(カ)「一人で行くなんて寂しいこと仰らないで下さい」

青信号。
ぶろろろろ・・・

(団長)「お前らは家にいた方が面白かったんじゃないのか? イロイロ」
(プ)「いや、たまには普通に過ごすのも悪くないなぁって」
(エ)「身が保たないですよ、そんなに毎日も・・・」
(団長)「・・・・・・・・・そうかい」
(カ)(・・・・・・二人きりになりたかったのに・・・)



・・・で、海岸。
海岸線が白ばみ、今にも太陽が顔を出しそうです。
一行の他にも車やバイクやらが数台集まっています。

(プ)「・・・・・・・・・さ、寒い〜・・・」
(エ)「やっぱり冬ですからぁ」

(カ)「・・・どうぞ」
(団長)「ん? 随分と気が利くな」

カステラが差し出したカップにはお茶が入っていました。

(プ)「カ、カステラちゃん、アタシにも・・・」
(カ)「カップがありませんわ」
(プ)「そんなぁ〜・・・」
(エ)「凍えそうですぅ〜」
(カ)「中にいればどうです?」

(団長)「・・・ったく・・・ほれ」
(プ)「ぅあ〜い、さんきゅう」
(エ)「あ〜ん、エクレアにもくださぃ〜」
(団長)(やっぱ放り出せばよかった・・・)

と、ついに太陽が水平線の向こうに顔を出しました。
辺りから何とも言えないどよめきのようなものが聞こえます。

(カ)「・・・・・・・・・」
団長の肩に寄り添うカステラ。

(プ)「ねぇ、あんなだったっけ? カステラちゃん」
(エ)「あれぇ、知らなかったんですかぁ? 夏頃からですよぉ」
(プ)「ほー・・・羨ましいね」
(エ)「お姉様もすればいいのに」
(プ)「出来れば苦労してないって・・・・・・はぁ・・・」
(エ)「頑張ってくださぁい♪」

よくよく見れば、一行の他はみんなカップルばかりで。
夜明けの薄明かりの中でいちゃついています。

(団長)「なんなんだ、人目もはばからずに・・・」

砂浜といい、車の中といい、あちこちであっと言う間に愛の宴が始まりました。

(団長)「か、帰る・・・ぞっ!」

(プ)「ぁはぁっ・・・エクレア・・・ちゃぁん・・・」
(エ)「・・・・・・ん・・・ぅ・・・」
既に二人も快楽の世界に浸っています。

(団長)「・・・・・・はぁ〜・・・ん?」

がっくりとうなだれる団長の袖を誰かが引っ張ります。

(団長)「カステラ・・・何だ、その瞳は?」

熱っぽく潤んだ目で団長を見つめるカステラ。
そのまま団長の手を取って胸に抱きしめました。

(カ)「・・・・・・・・・勝明様ぁ・・・」

上目遣いに団長を見つめ、濡れた唇を近づけてきます。

(団長)「・・・いや、その、あのなぁ・・・」
(カ)「焦らされっぱなしでおかしくなりそうですわ・・・」
(団長)「だからって・・・なぁ・・・」

(カ)「・・・・・・・・・あら?」

(団長)「時と場所を弁えてくれよ・・・頼むから」
(カ)「いつもそうやって時間を止めて逃げて・・・狡い人・・・」
(団長)「・・・・・・・・・」



どうやらこの隠れ初日の出スポットは同時に姫初めスポットでもあったようです(笑)


続く。






(亮)「これが合同漫才にこいつらが居なかった訳です」




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