翌朝7:30 壮が歯を磨いているところへ典がやってきた。 「ヨッ、にくいね、この色男」 両手にいっぱいの水に顔を浸けて目を覚ましていた典が思わず噴く。 「・・・・聞こえたのか?」 引きつった顔で聞き返す。 「ばっちりと・・・そういや栄が何か言いたそうだったんだけど、お前んとこ行った?」 「栄も来たのか・・・」 がっくりとうなだれる典。 「秀にはバレてねぇよな・・・」 「そんな気を落とすなって、男ならどーんと」 他人事だと思いやがって、典は背中をばしばし叩く壮にそう思いながら歯ブラシを取って歯を磨き初めた。 「朝飯なんだろーな」 とたとたと出てゆく壮の背中で典の動きが止まる。 「あ゛・・・・」 今朝の当番は典だった。 キッチンでは既に朝食の用意が出来上がっているどころか、リビングで秀と栄が食べ始めていた。 「おせーぞ、当番」 秀が味噌汁を啜りながら何か投げてよこした。 「キャラメルか・・・助かった・・・」 カプセル状の物体(特殊封印した任務書)を開封しながらキッチンへ入る典。キャラメルと優がいた。 「今日は私が用意しろってご主人様に言われましたけど・・・?」 「何か出動要請があったらしいじゃない、先に食べていいわよ」 しっかりした(し過ぎる気もするが)女二人に言われ、手に持っていた任務書に気が付いた。確かに、今日付けで出動要請が入っている。リビングの二人が何も言ってなかったのと、先程壮の抗議が聞こえてきたのとで、どうやら今回はJUSTICE総出撃のようだ。 典が言われるままに朝食を食べ始めたところへ、毛布をかぶったままの華が駆け込んできた。 「お姉ちゃーん・・・」 そのままの格好でキッチンへ入っていく華、しばらくして三人が揃って出ていった。 「何かあったんだろーか?」 食後の茶を飲みつつ秀が指をさす。 「さぁ?ある程度の事は予測できますけど・・・」 三人と入れ替わるように入ってきた麗は、9割以上閉じたような目でふらふら歩いてソファの上へと倒れ込み、そのまま眠ってしまったようだ。 「ずいぶん器用な寝方だな・・・」 誰に言うともなしに典がつぶやいた。 「・・・どうしたものかしらねぇ・・・?」 苦笑いしながら優が洩らす。キャラメルの部屋で三人が困っていた。ベッドや机の上には赤や黒といった派手な柄のブラジャーが散乱している。 「どうしよう・・・」 今はもう毛布をかぶっていない華が心細げにぽそりと言う。 見れば、胸囲が二まわりくらい大きくなっているようだ。 「朝起きたらこれだもん・・・」 いつもは気丈な華が涙目になっている。今朝起きたら急に胸が大きくなっていたのだ。 「・・・私や雅のじゃ大きすぎるしねぇ・・・」 「私のはぴったりなんですけどね・・・・」 こればかりはどうしようもない。キャラメルのを借りるにもあまりに派手すぎて中学生にはそぐわない物ばかりだった。 「あ、そういえば・・・」 キャラメルがタンスの奥を引っかき回して一つの包みを取り出した。 「これならどうですか?」 中に入っていた物は華美な装飾のない、白いやつだった。 「なんだ、あるんじゃない」 ほっとして受け取った優の手が止まる。 「でも・・シルクなんです・・・」 もはや引きつったままの表情が変わらない。 「あ〜・・・・う〜・・・」 華が声になっていない声で呻く。 「こうなったら、作るしかないですね・・・30分あれば出来ますから、待ってて下さい」 そう言うと、キャラメルは引き出しからミシンやら何やらを取り出して準備にかかった。 ホント、家事なら何でも出来るね。 男共が食事もそこそこに出ていった後、ようやく団長である俺が起き出してきた。ダメじゃん。 「なんだ、奴等はもう行ったのか・・・」 ぼりぼり頭を掻いてみる。遅くまで書類と睨めっこなんてしなきゃよかった。眠くてかなわん。 「だんちょ〜、みんなどこ行ったのぉ〜」 やけに血色のいい雅が聞いてくる。うるせぇよ。 「あ〜、山2つぐらい越えたとこの寒村・・・つっても寒かねぇな、火山だし」 「そんなとこまで何しに・・・?」 すかさず優が割ってはいる。 「龍退治」 「龍が出るの?」 好奇の目で華が口を挟む。胸の方はもう大丈夫なようだ。 「さぁな、いかんせん情報がはっきりしないから詳しいことはわからん・・・それより時間、遅刻するぞ」 「テスト明けでお休みだもん」 んならあんな大騒ぎするなよな、となりの部屋で。 「ふぁ〜・・・・さてぇ、今日のお仕事にでもかかりますかねぇ・・・」 首をぐきぐき鳴らしつつ業務棟へ向かう俺。来るべき闘いのために、今から少しずつ頑張っておかなければ。 そして数週間後、事件は突然やってくる・・・
To be continued
あとがき(ていうか釈明) これ以降は著者としての折口が申し上げます。 まずはすんません、許してください。 3月に書き始めてアップにこぎつけたのが今月。 三ヶ月も何やっとんねん!などとキッツイお言葉が飛んで来そうですが、 とりあえず勘弁してください。 そしてもう一つ。 官能的なコースがありますが、次回以降をあまり期待しないようにしてください。 これが限界なんです。もう書けません。 なんか長文書くと似たような表現ばっか使ってる気がして仕方ないです。 何か参考になるようなことをご一報いただければ幸いです。 2000/6/4 折口 亮
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