第12話 織物

商店街の一角に昔からひっそりと佇む、ある衣料品店。
元は呉服屋だったそうですが、今は洋服なども取りそろえております。
品揃えが豊富なので、プリン行きつけのお店です。

前回の成功に味をしめたプリンが新たな一着を作ろうとやってきました。
はてさて、どの様なお話になるやら・・・



(プリン:プ)「・・・・・・う〜ん」
生地の前で悩んでいるプリン。
普通にしてればバストがデカイだけなんだけどねぇ・・・
(プ)「どれもパッとしないなぁ・・・やっぱ既製品じゃダメかな?」
真剣な眼差しはプロ顔負け。
これでもう少しまともな衣装を作ればいいのに。
試行錯誤しているところへ顔なじみの店員、クレハが。
て言うか店の娘さんなんだけど。

(クレハ:ク)「どぉもぉ〜 何かお探し?」
歳は見た感じ18、19だろうと思われます。
プリンブランドの数少ない試着者です。
(ク)「ま〜た妙な服こさえんの?」
独特のなまりが面白い喋りです。
(プ)「イロイロ考えてるんだけどねぇ」
(ク)「へぇ・・・しっかしアレは傑作やったわ、『裸エプロン用エプロン』?」
(プ)「見えそうでいて絶対見えない」(笑)
(ク)「ちゃんとカップが付いとるとこが親切設計やね」
(プ)「一番苦労したんだよぉ・・・ほら、コレでしょ」
(ク)「自分サイズじゃ使えへんもんな」
(プ)「ホント、何でこんな大きくしたんだろ?」
(ク)「デカイと言やぁ・・・たまにTシャツ買いに来るお客がおるんよ、それがまた尋常やないサイズでなぁ」

ある人物が頭に浮かんだプリン。

(プ)「・・・その人もしかして動物耳?」
(ク)「おろ、なんや、知り合いか?」
(プ)「ちょっとね・・・」

よほど嬉しかったのか、またもあの手紙が脳裏によぎります。

(ク)「・・・まぁええわ、欲しいもんがあったら遠慮なく言うたってな、お安くしときまっせぇ♪」
(プ)「いやー、イメージにぴったりの布がなかなか見つからなくて」
(ク)「なんやそら・・・んなら自分で織ったったらええのんとちがう?」
(プ)「織機なんて持ってないよ?」
(ク)「まぁそやろな・・・そんなことやと思うてちゃんと用意しといたわ、ついといで」

そう言ってすたすたと店の奥に行ってしまったクレハ。

(プ)「ね、ねぇちょっと、いいの?」
(ク)「かまへんがな、どーせ自分ちみたいなもんやろ」
(プ)「そうじゃなくて、お店」
(ク)「・・・・・・・・・そやね」(照)


・・・で、昼休み・・・


(ク)「おまっとさ〜ん」
(プ)「気付かなかったけど、お客さんいっぱい来るんだね」
(ク)「当たり前やがな、ウチは老舗やで・・・そや、織機やったな」
(プ)「用意してたって言ったよねぇ? どんなの?」
(ク)「そんな焦らんと、メシでも食いながら話そうや」

そんなわけで近くの食堂へ。

がらがらがら・・・(引き戸)
(ク)「おばちゃーん、日替わり二人前ー」
(プ)「穴場だよね、ここ」
(ク)「安くて旨い、メシはこうでなくちゃアカン」

(ク)「で、織機やけどな」
(プ)「うん」
(ク)「機械の前にまず糸や、『あまつゆの糸』って知っとるか?」
(プ)「・・・ドラゴンの角に落っこってるやつ?」
(ク)「それは『雨露の糸』やろ、ウチが言うとんのは『甘汁の糸』や」
(プ)「聞いたことあるかも・・・乙女の汁から紡ぎだしたって・・・」
(ク)「そう、それや・・・でな、その糸がウチにあんねん
(プ)「うそ」
(ク)「ホンマや、こないだ倉庫の整理しとったら出てきおったんや」
(プ)「どれくらい?」
(ク)「まぁ・・・着物一着織れるくらいの量かな?」
(プ)「スゴイじゃない、伝説の糸だよね?」
(ク)「まぁな それで対をなす『性なる織機』やけどな、ウチにはないねん」
(プ)「え?どゆこと?だってさっき・・・」
(ク)「調べておいたわ、世界に数台の内の一つが近所にあるっつう情報を元に検索かけたらな」
(プ)「かけたら・・・?」
(ク)「所在地がなんと正義団! どや?完璧やろ」
(プ)「え?なんて言うか・・・あるところにはあるんだね、やっぱ」
(ク)「これでアンタんとこの団長さんに頼んで使えるようになりゃ万事OKやね」
(プ)「糸は?いくらなんでもタダじゃないよね?」
(ク)「一本残して全部やる」
(プ)「まじ? 大切な物じゃないの?」
(ク)「ウチが持っとってもしゃーないしな、んな曰く付きの品じゃ売りもんにもならんし」
(プ)「はぁ・・・」
(ク)「その代わりと言っちゃアレやけどな、ウチにも一着こさえてな」
(プ)「それは任せといて!アタシの腕にかかればなんでも来いだわ」
(ク)「そら楽しみやな・・・おっと、こんな時間や!親父に怒鳴られるわ」
(プ)「じゃあ後でね」
(ク)「おう、待っとるで! ごちそーさーん♪」
がらがらがら・・・(引き戸)
(プ)「え?ごちそーさーん♪って・・・」
机の上にはしっかりと伝票が残っていましたとさ。



続く。



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