ある日の俺的 52

ばれん。
のろけ。
おねつ。


バレンタインデー
(聖バレンタインは269年頃殉教死したローマの司祭) 2月14日。
聖バレンタインの記念日。
この日に愛する人に(特に女性から男性に)贈り物をする。
日本では1958年頃より流行。
・・・だそうです(広辞苑より)

キッチンで典が夕食の準備をしております。
・・・どこかでみたような光景がですが・・・


(典)「・・・」

キャベツを無表情で刻み続ける姿もどこかで見たような・・・?

がらがら・・・(ドア開)

(典)「・・・何か用か?」

振り向きもせずに入ってきた人が解ったようです。

(雅)「んー? ・・・」

レンジの鍋をのぞき込みつつ典の背後へ回り込んでいきます。

(典)「手伝う気がないなら邪魔するなよ」

冷蔵庫から鰺を取り出してさばき始めた典の背中に寄り添う雅。

(典)「・・・・・・聞こえんのか」
(雅)「ねぇ、憶えてる・・・?」
(典)「何を?」
(雅)「一年間イロイロあったね・・・良いことも、やなことも・・・」

雅の言葉に典の動きが止まりました。

(典)「・・・・・・あぁ」

絞り出すように呟く典。
気のせいか手が震えているようでもあります。

(雅)「好きだよ・・・いつまでも、ずっと」

狭いキッチンにお湯の沸く音だけが響いていました。



リビング。
優が買い物から帰ってきました。

(優)「・・・・・・何よ、このイヤ〜な熱さは」

キッチンの扉を指しつつ荷物を下ろしました。

(秀)「んー、去年の再来?」
(栄)「何かあったんですか?」
(壮)「アレだろ、典の天然事件」
(秀)「・・・んな名前付けんなよ」
(優)「そう言えばきっかけって何だったのよ?」
(秀)「俺が知るかい・・・」



で。
青嵐高校剣道部。

(沖田)「・・・先輩・・・・・・」

沖田君が来てます。

(芹沢)「あんらよ?(何だよ)」
(土方)「口に物入れながら喋るな」
(近藤)「チョコレートの処分を持ちかけてきたのはお前だろ」
(沖田)「・・・いや、皆さんに持ってきたんですけど」
(近藤)「そうは言ってもだな、この芹沢君は何を隠そう義理チョコ一つすらもらえない気の毒な奴なんだよ」
(土方)「んむ、毎年俺達が貰った奴を処分してくれる無くてはならない存在だ」
(沖田)「はぁ・・・」
(芹沢)「・・・・・・なんか俺、惨めっぽくないすか?」
(土方)「案ずるな、十分惨めだ」
(沖田)「はは・・・それじゃ」

そそくさと立ち去ろうとする沖田。
呼び止める近藤。

(近藤)「ちょいまち・・・そのちっさな包みは?」
(沖田)「お気になさらずに・・・」

(土方)「・・・本命、か?」
(近藤)「まぁ! あの子に?」
(芹沢)「・・・・・・はぁ・・・」

ため息を吐きつつも食べる芹沢君でした。



(沖田)「・・・しかし・・・どーゆー意味だろう?」

少し前、その小さな包みをくれた女子の言葉が気になります。

(華)「・・・絶対食べないでね・・・」

耳まで紅くしてそう言うと、彼女は走っていってしまいました。

(沖田)「気になる・・・」

包みを開けて中身を確認すると、かわいらしくラッピングされたチョコが一つ。
宝石のように収められていました。

(沖田)「別におかしくないよな?」

匂いを嗅ぎ、少し舐めてからおそるおそる口の中へ。

(沖田)「・・・?」

怖々噛めば、何のことはない、普通のチョコレートです。

(沖田)「・・・何であんな事言ったんだろ? 華ちゃん」

愛の力でしょうか、華の手作り殺人チョコが奇跡的にもごく普通の味だったのです。

(沖田)「明日聞いてみよう」

足取りも軽く、帰途につく沖田君。
次の日彼が欠席したのは言うまでもありません・・・



続く。






(華)「え!? 食べちゃったの? うそぉ!!(でも嬉しい)」




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