ある日の俺的 51

解決編。
季節ネタとかひっくるめ。


2/3は節分です(地方によってズレ有り)
豆をまいたり柊と鰯の頭を軒先に飾ったり。



玄関先でお姉様が鰯の頭をくくりつけてます。

(優)「・・・これでよし、と」
(サブレ)「どーしてかざるの?」
(優)「んー、『悪い鬼さんがお家に入ってこないように』だったかしら」
(サブレ)「おにさんはいわしがきらいなのかなぁ」
(タルト)「おいしいのにねぇ、いわし」
(優)「じゃあ今夜はつみれ汁にしようか?」
(サブレ)「やったあ」
(タルト)「たるともおてつだいするー」

2人ともやはり猫ですか、魚系は喜んで食べるようです。

と、そこへ華が帰ってきました。
(タルト)「はーちゃん、おかえりー」
(華)「・・・・・・」

しかし何も言わずに中へ駆け込んでしまいました。

(サブレ)「はーちゃんないてたよ」
(優)「何かあったのかしら?」

訳も分からずに顔を見合わせる三人。
首をひねりながら家の中へ戻りました。



路地から正義団の門がある通りに人影が出てきました。

(沖田)「・・・この辺だと思うけど・・・?」

華を追ってきた沖田君です。
学校から追いかけてきたのでしょうか、息も絶え絶えに辺りを見回しています。

(沖田)「足早いなぁ・・・華ちゃん・・・」

(沖田)「『俺的正義団』・・・ここか・・・」

広く開け放たれた門の前に立ち、アルテマイト製の看板に記された文字を見つめる沖田。
しばらくその場に立ちつくしていましたが、意を決したように森の奥へと続く坂道を上り始めました。



居間。
団長がやってきました。

(団長)「・・・学校でなんかあったのか? 華の奴は」

廊下ですれ違ったのか、誰にともなく聞いてみます。

(壮)「・・・さぁ?」
(秀)「月モノ・・・ってもロボだしねぇ」
(典)「・・・何か相談に乗ってやればどうだ?」
(雅)「へ? それってボクより適任なヒトが・・・」
(麗)「もういないよ」
(キャラメル)「さっき出て行かれましたよ、素早いですねぇ」
(団長)「・・・・・・おまいら、そーゆー事には敏感なのな」



そんなわけで華の部屋。
ドアの前で栄が中の様子を窺っております。

(栄)「・・・・・・・・・」

華の想いがドアを挟んでも痛いほどに感じられます。
彼女が自分から話し始めるまで待つことにしました。

(華)「・・・・・・栄さん・・・」

ベッドに突っ伏す華もまた、ドアの向こうから届く栄の優しさや暖かさを感じていました。
そして、徐々に近づいてくるもう一人の心とその狭間で揺れる自分の気持ちをも。

(華)「・・・私・・・どうすればいいの・・・?」

(栄)「迷う事など、無いでしょう・・・貴女の想いのままを伝えれば・・・」

(華)「でも私・・・自分の心が、解らない・・・」

消え入りそうな華の声に目を細める栄。
少し考えた後、口を開きました。

(栄)「素直になって下さい・・・自分を偽らずに・・・・・・それが純粋な気持ちなら誰も貴女を責めたりしませんよ」

しばしの沈黙。
やがて中からドアが開けられ、華が姿を現しました。

(華)「・・・栄さん・・・」

優しい微笑みを浮かべる栄の胸に飛び込みます。
(華)「栄さんのことは、大好きです・・・今までも、たぶん、これからもずっと・・・」

自分に言い聞かせるように一言ずつゆっくりしゃべり出しました。

(華)「・・・でも・・・今は、もう一人・・・同じくらいに好きな人がいるの・・・」

精一杯にそれだけを言うと、栄の胸に顔を埋めて肩をふるわせています。

(栄)「他人を好きになることって、素晴らしいことじゃありませんか?
焦る必要なんてありません、幾つも恋をしてゆっくりと大人になって下さい
・・・そのときに、本当の気持ちを決めればいいのですから」


そっと華の身体を離し、その顔をのぞき込みます。

(栄)「前にも言ったはずですよ、貴女に涙は似合わない、って」
(華)「・・・・・・はい」

瞬きで涙を払い、笑顔を作る華。
その背を軽く押しながら栄が促します。

(栄)「でしたら、早く行ってあげて下さい、彼も迷っている筈です」

華は少し驚いた表情を見せ、少し照れた顔になって頷くと、吹き抜けを飛び降りて表へ向かいました。



(栄)「・・・最後まで、その笑顔を向けて欲しいものですね・・・」





(沖田)「・・・・・・」

長い坂道を真剣な表情で上り続ける沖田。
その眼差しは試合の時よりも鋭く、ただ前を見つめています。

(沖田)(・・・ロボットだろうがキメラだろうが関係ない・・・彼女は彼女じゃないか・・・
一瞬でも迷ってしまった俺を受け入れてくれるかは解らないが・・・それでも・・・)


黙々と歩いていた沖田が、ふと顔を上げると坂の向こうに人影が現れました。
夕日をバックに立つその影は沖田の姿を認めると、一直線にこちらへ向かって来ます。

(沖田)「華ちゃん・・・」

茜色に染まる空の下で二つの影が重なり、そのまま闇へとけて行きました・・・


続く。






(華)「・・・もぅ、迷わないよ・・・・・・」




戻る